2002年 5月 公開
フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロヴェニア 制作

2002年 アカデミー外国語映画賞 受賞
2001年 カンヌ国際映画祭 脚本賞 受賞
2002年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞 受賞
他、17の賞を受賞する。

1993年
ボスニア紛争の中立地帯で、セルビア軍の新兵ニノと、ボスニア軍チキが、ひょんなことから共に時間を過ごすことになってしまう。

二人は敵どおし。
共に紛争で家族や友人を失い、憎しみ合う仲だ。

武器を手にする方が主導権を握る。
そして、死んだと思っていたチキの戦友のツェラが生きていることがわかる。
しかし、ツェラの身体の下には爆弾があり少しでも動くと爆発する。

どうにかして戦友を助けようとするチキだが、打つ手がない。
ニノも自分と共に偵察に来て、チキに殺された老兵の仕掛けた爆弾に打つ手がない。

ツェラの身体の下の爆弾が破裂したらニノ自分自身の命もない。
爆弾を取り外すためには専門家が必要だ。

中立地帯に繰り広げられる敵同士のにらみ合いは、不思議な感情と状態を作り出す。

ブラックユーモア的なストーリーの展開は、不思議な安心と共にイライラするような苛立ちと同居する。

ニノが武器を握ればもう一方のチキは折れ、その反対にチキ片方が武器を握ればニノが折れる。
本来なら協力なんかあり得ないはずの二人が、互いの命を懸けて助け合う。

国連軍が三人を助けようと向かうが、本部からは退去するように指示が出る。
国連軍の『中立』としての立場が、セルビア軍にもボスニア軍にも手が出せないからだ。

そこへ情報を手に入れたマスコミが駆けつける。
どうにかして特ダネを手に入れ、視聴者の関心を引きたいマスコミは、あの手この手で国連軍を追いこむ。

マスコミに手を焼く国連軍は、どうしようもなくなり三人の救助をすることになるが…。

紛争の地で、
国連軍は国連軍の思惑で、マスコミはマスコミの思惑で動き、
誰も救われることのない状況は続く。

優しさもむなしさも、語ることなく、憎しみが連鎖する。

何とも言い難い思いの残る映画だ。

(J)

「ノー・マンズ・ランド」 NO MAN’S LAND