フィツジェラルド Francis Scott Fitzgerald
1896年、ミネソタ生まれ。
ヘミングウェイとともに「失われた世代」の作家として知られる。
大学在学中から小説を書きはじめ、一躍時代の寵児となる。
烈しい恋の末、美貌の女性ゼルタと結婚、贅をつくした生活を送る。
しかし、毎夜の饗宴をささえるため乱作をはじめ、人気を失いハリウッドの台本書きに転落する。
1940年、最後の力を傾けて執筆した『ラスト・タイクーン』が未完のまま、心臓発作で死去。
作品には、『華麗なるギャッビー』『夜はやさし』など。

老人として生まれ、若者へと時間を逆行して生きるベンジャミン・バトム。
しかしその心は同世代の人間と変わらず、青春時代のさまざまなことを経験し、苦悩や恋愛、結婚を経験し、戦争などの逆境にも生きる。
不思議な人生を送る彼の最後は、赤ん坊へと進んで行く。

ブラッド・ピット主演映画で有名になった『ベンジャミン・バトムの数奇な人生』の原作本で、未訳だったフィツジェラルドの短編作品を翻訳された。
ファンタジーか、それともSFか。
文学史上の巨匠であるフィツジェラルドは、ヘミングウェイやフォークナーとならんでその世代を代表する作家でもある。

1860年病院で生まれたベンジャミンは、ロジャー・バトム夫妻の子供として生まれる。
男の子が欲しかった父親は、わが子の姿に動揺しながらも、子どもらしく育てようとするが、どう見ても老人にしか見えないベンジャミンに、複雑な思いを抱きながらも少年用の服を着せ、白髪を染めて、それらしく生きるようにと育てる。
幼稚園に通わせて、折り紙、塗り絵、ネックレス造りもする。
12歳の頃、鏡を見ていたベンジャミンはとんでもないことに気づく。
白髪から灰色に髪が変わり、肌も血色も良くなり、曲がっていた背もまっすぐに変わり、健康状態も改善されていた。
長ズボンをはくことを許されたベンジャミンは、父親との妥協点を見いだすこととなった。

年上の好みのヒルデガルドは、細見で華奢で、灰色に見えるかみは、ガス灯に照らされて蜂蜜色に輝いているような女性だった。
彼女を気に入ったベンジャミンは、やがて彼女と結婚することになる。
が、段々と若くなっていく彼と、段々年をとっていくヒルデガルドは、やがて言い争いを繰り返すようになる。
戦争では手柄を立て、仕事にも日々充実感をもち、小さい頃には老人だったせいで今くいかなかった学校生活も、次々とこなしていくベンジャミンだった。
が、段々と若返るにしたがって、背は小さくなり、やがては、興味や関心も子供時代へと変化していく。

フィツジェラルドの短編7作品が収められている作品集で、ミステリー等も収められている。
ロマンに溢れ、ファンタスティックな作品が多く納められていて、それぞれの作品が、短編ながらも、それぞれの個性を放っている。
気取らず楽しめる、そんな作品集だった。

(J)

 

「ベンジャミン・バトム 数奇な人生」