橘 玲 TACHIBANA Akira
1959(昭和34)年生まれ。
作家。
小説『マネーロンダリング』『タックスヘイブン』のほか、ノンフィクションも著し、『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』はベストセラー。
『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』『「読まなくてもいい本」の読書案内』など、著作多数。

2017年新書大賞受賞作品。

この社会にはきれいごとがあふれている。
人間は平等で、努力は報われる、など絵空事も多くあるのだと本書では伝えている。
知能や学歴、年収、犯罪歴、そして美貌格差。
そんな口には出しにくい不愉快な現実を本書では直視している。

親から子へ外見や性格が遺伝することは昔から知られている。
背の高い親の子供は長身に、せっかちな子どもの親もせっかちだという。
と言いながら、「トンビがタカを生む」という諺のように親とは違うものを持った子供が表われるという言い方もする。
では、馬鹿は遺伝なのか。
やせた親からやせた子どもが生まれて、太った親から太った子どもは、体型が遺伝だということを述べている。
親が陽気なら子どもも明るいか。
親が陰鬱なら子どもは暗い性格に育つのか。
つまり性格と遺伝は関係あるのかないのか。

また、アルコール中毒は遺伝するのか。
精神病は遺伝するのか。
犯罪は遺伝するのか。

犯罪者に脳の気質的・精神的な異常が認められない場合は、凶行に至る原因はすべて環境にあることになってしまう。
イギリスで、1994年から3年間に生まれた5000組の双子の子どもたちを対象に、「反社会的な傾向」の遺伝率が調査された。
それによると、「冷淡で無感情」という性格を持つ子どもの遺伝率は30%で残りは環境の影響だと言われた。
常識的な結果だった。
次いで研究者は、「矯正不可能」と評された、きわめて高い「反社会性」を持つ子どもだけを調査したところ、その遺伝率は81%と衝撃的な数字が出てきたという。
環境の影響は2割弱しかなく、子育てではなく、友だち関係のような「非共有環境」の影響とされたという。
この結果が正しいとすれば、子どもの極端な異常ともいえる行動に対して親のできることはほとんどないことになる。
親の「責任」とは、たまたまその遺伝子を持っており、子どもに伝えたということだけだ。
また、体重の遺伝率が74%と身長の率よりも高く、ダイエットによる失敗(努力が足らない)というよりは、遺伝的に痩せていないだけということも書かれている。

何とも衝撃的なことだ。
えっ、本当!と言いたくなるようなことがずらずらと出てくるが、それなりに興味津々で読んだ。
不思議とも不可解とも、また不快とも、成程とも言える世界へ、行きたければ読んで見られることをお勧めする。

(J)
本書には、常識的に社会に言われていることとは一味違うことがいろいろと書かれている。

「言ってはいけない」 残酷すぎる真実