椅刈 湯葉 isukari yuba
福岡県生まれの生物学研究者。
平日に仕事をして土日に小説を書く生活をしていたが、2016年に『横浜SF』で第1回カクヨカWeb小説コンテストSF部門大賞を受賞し兼業作家となったため休日が消滅した。
要は認識の問題ということです。

改築工事を繰り返す<横浜駅>が、ついに自己増殖を開始。
それから数百年―JR北日本・JR福岡2社が独自技術で防衛戦を続けるものの、日本は本州の99%が横浜駅化した。
脳に埋め込まれたSuikaで人間が管理されるエキナカ社会。
その外側で暮らす非Suika住民であるヒロトは、駅への反逆で追放された男から横浜駅内に5日間だけいることができる『18きっぷ』を貰い、使命とも思える頼みごとをされる。
ヒロトは横浜駅構内への初めての旅に出る決意をし、42番出口を求めて駅構内へと入る。

ヒロトの住む九十九段下と呼ばれる岬は、横浜駅から吐き出される物資に頼って生活している。
ヒロトの来ている服も横浜駅から吐き出されたものだ。
駅外の住人とばれないためには、服装も変えたほうがいいかもしれない。
生まれた時から岬に住むヒロトには、横浜駅構内のことはほとんどわからない。
駅構内に入って教えられたように、『横浜駅スイカネット★キオスク端末』で42番出口を探す。

●42番出口は、人里離れた山の中にある。
●横浜駅の主要な観光地は、富士山のほかに、岩手の巨大堤防、三重の伊勢神宮、古代都市名古屋の遺跡などがある。
●横須賀地区の名物はサレーライスであり、つい先週に新店舗「海自」がオープンし、開店セールで大盛り400ミリエンなので必ず行くべきである。
●横浜駅放送の人気アニメ「しうまいくん」の劇場版「しうまいくん、宇宙へ行く」が来週公開する。
●しうまいくんとは未来の世界からやってきたしゅうまい型ロボット(フードロイド)だったが、子供に残されて捨てられて地縛霊化した妖怪であり、食べ残しをする子供を見かけると必殺100万ボルトを食らわせる。

この付近は横須賀というのが中心都市で、12000m(150分)は普段足場の悪い岬を歩き慣れているヒロトには楽に歩ける距離だった。
だが、エキナカに潜入したからには、普段食べてないカレーライスを食べたかった。
そのカレーライスを食べたヒロトは、飲食代に手に持っていた『500』と刻印された硬貨を渡すが、今は使われておらず、駅員に捕まってしまう。

留置場に入れられたヒロトは、その後JR北日本から来た工作員のアンドロイドネップシャマイと行動を共にすることになる。
様々なことを教えられながら、ヒロトは24番出口を求めて、甲府に来る。
そして、甲府で「キセル同盟」の「リーダー」と呼ばれていたケイハに出会い、いよいよ42番出口へと、向かうことになる。

SF小説としての確かな手ごたえのある小説に出会った感じの作品だ。
ストーリーは未来の<横浜駅>に支配された時代の物語だ。
発想がユニークで、一気に読める感じだし、最後までストーリーがうまく展開されている。
本当にSuikaと自動改札に支配される、こんな未来が地球に来ないとも限らない。
この世界が機械に支配されたら、人間の未来はどんなものだろうか・・・。

(J)

 

 

 

 

「横浜駅SF」 YOKOHAMA STATION FABLE