キオ・スターク Kio Stark
著書には他に、小説『Follow Me Down(わたしを追いかけてきて)』、独学のためのガイドブック『Don’t Go Back to School(学校には戻らないで)』がある。
現在はニューヨークのブルックリンで暮らし、日々、見知らぬ人たちに話しかけてる。

その肉屋はカウンターがとても高くて、サンドイッチを作ってくれる店員と目を合わせるには、つま先立ちをしなければならない。
わたしが注文し、相手は頷く。
注文を終えてちょっと後ろに下がると、上のほうから声がする。
「調子はどうだい?」はじごに上って商品を補充している店主だ。
「まあまあよ」と答える。
「ここのサンドイッチを食べれば、もっと元気になれそう」。
店主は笑い、棚に向きなおって缶詰を置いていく。
「そちらの調子はどう?」
店主が振り向く。
「おれか?きみが来てくれたから、ごきげんだ」。
そう言ってちょっと頭を下げ、にこりと微笑む。
向こうはお世辞を言い、こちらもお世辞として受け取める。
「今日は休みなのかい?」わたしは勤め人の服装をしていない。
だからそう聞かれたのだ。
本文 抜粋

見知らぬ人とのほんの少しの会話。
でも、とても親密で気持のよい会話だ。
筆者は、その会話を、世界から偏見をなくしていくために方法として提案している。

オープンで敬意に満ちた誠実なやりとりは、悪意のあるやりとり、つまり嫌がらせや卑猥な言葉を浴びせることでは当然ない。
そして、話したくない人に向かって無理やり話しかけて暴力的に会話することでもない。
親しみや人間性を生み出そうとして話しかけているのでもなく、ごく自然と、でも、意図的に、見知らぬ人との会話を楽しむことだ。

「知らない人」に話しかけないように教えられた経験のある人もいるだろう。
「知らない人」は怖い人だと思っている人もいるだろう。
「知らない人」は文化や歴史の違いもあるし、下手をすれば手痛い目にも合うだろう。
でも、それでも見知らぬ人に、ほんの一瞬の素敵な出会いを求めて、話しかけることを勧めている。

ささやかな出会いが、大きなことへの第一歩になることを願って、筆者は、日々実践している様である.

目に入るものが何であれ、それがどこから来たものであれ、ひとつ確かなことがある。
周囲にいる人たちはみな一人ひとりの人間であって、分類項目の集合ではないということだ。
だからこそ、ここには冒険がある。
暮らしの中で毎日出会える冒険。
この世界をどう分けるのか、それをきちんと理解すること、知り合いになれう人を自分の感覚で選ぶこと、ちょっと立ち止まって知らない人に挨拶してみること。
そうした勇気ある行動が、公共の場での経験を変えてくれるかもしれない。
そして、自分が変わることで、公共の場そのものも少しずつ変えていけるかもしれない。
本文抜粋

(J)

 

「知らない人に出会う」When Strangers Meet