C・D・B・ブライアン 村上春樹 訳
1936年、ニューヨーク生まれ。
イェール大学卒業。
陸軍情報将校として沖縄、韓国、ドイツに赴任した経験を持つ。
65年刊行の長編『P・S・ウィルキンソン』でハーバー賞受賞。
83年発表の長編『美しい女と醜い情景』ほか、76年の『友軍の砲撃』、79年の『国立航空宇宙博物館』、95年の『UFO誘拐事件の真相』など、ノンフィクション作品を多く手がけている。

本書は、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の主人公ギャツビーがかなわなかった夢を実現したジョージ・デスリフと、その友人であるアルフレッドの語る物語。
また、ギャツビーの叶わなかった夢を叶えたはずのデスリフが、思いもよらぬ幻滅を味わうというものでもある。

アルフレッドとデスリフは、小さい頃からの友人だった。
1936年に生まれたジョージ・デスリフと、一つ違いのアルフレッドは、寄宿学校にやられて、共に過ごした。
二人は共に育てられた。
別々の大学を出たが、二人の友情は変わらずに続いている。

アルフレッドは物書きで、収入は十分とは言えないけでども、遺産を相続するし、それなりにはやっていける。
デスリフの曾祖父は、土地で財産を築いた。
曾祖父の娘婿は州知事だった。
土地を売ったまとまった金を株式投資し、大恐慌も無事にのりきった。
財産は父親たちの兄弟に分けられていたが、父の死後、ジョージは遺産からもたらされる収入を再投資した。

アルフレッドが新聞の仕事についていた頃、ディナー・パーティーでジョージはアリス・タウンゼンドと恋に落ちた。
アリスは18歳で社交界デビューし、とても美しくスタイルも良く、『ヴォーグ』に写真も載った。
アリスにとっては着るものは重要なことだったので、彼女はジョージにそれが大事なことであると考えるように仕向けた。
ジョージは趣味がよかった。
ブルティッシュ風の仕立ての服装へと変化したジョージは大胆な着こなしをした。

ギャツビーの叶わぬ夢とは、自分の思いを十分にかけた、美しい女性と結婚することだった。
アルフレッドが止めたのにもかかわらず、デスリフはギャツビーの夢を自分の夢として、叶えるべくして、充分に美しく、十分に理想とするアリスと結婚する。
時の流れと共に、デスリフとアリスの関係は変化する。
いつも自分の方を向いていてほしいアリスと、呼んでも返事もしないアリスへの不満に何時しか冷たい空気が流れだす。

ギャツビーへのオマージュは、哀しみや失望への変わる。
60年代の恋愛物語の本書は、派手やかで美しくありながらも、心の空虚さや空回りを描き出す。

アルフレッドの兄の薬物依存の話など、苦しみながらも共に関係を切り開いて行く姿や、意見や思想の違いを超えても、続いていく友情に、どこかほっとするような、羨ましいような思いも抱かせる物語である。

(J)

「偉大なるデスリフ」