jurinburogu201604131

 

水野 敬也 (みずの けいや)

愛知県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。著書に『四つ話のクローバー』(文響社)『ウケる技術』(共著、新潮文庫)『雨の日も、晴れ男』(文藝春秋)、『「美女と野獣」の野獣になる方法』『大金星』がある。また、DVD作品『温厚な上司の怒らせ方』の企画構成・脚本や漫画『地球くん』の企画・原案を手がける。

 

二日酔い気味のある日の朝、

「おい、起きろや」という、聞きなれない声で目を覚ました。

眠気で思いまぶたをゆっくりと持ち上げた瞬間、眼球が飛び出るかと思うぐらいの衝撃と共に、

枕元にぼってりとした大きな腹を四本ある腕の一つでさすっている長い鼻の者が座っていた。

「ああ、これは夢だな」と思いながらも「お前、だれ」と大胆にたずねると、

「だれやあれへんがな。ガネーシャやがな」と答えた。

タバコを吸いながらガネーシャと名乗った化け物は、ぷはーと煙を出す。

「夢ちゃうで」強い口調で言われて人の心が読めるとわかる。

「自分、そんなことやから、『夢』を現実にでけへんのやで」

腹が立ちながらも再び寝ようとする僕は突然思い出した。「いや、そんなはずは……」

昨日の夜酔っ払いながら、号泣しながら、インドで買ってきた神様の置き物に

「なんでもしますから」と願い事をしたようである。

「で、どないすんねん」

ということで、僕の夢の実現に向けて、

関西弁でしゃべるインドの神様・ガネーシャの課題に取りかかることになる。

毎日ひとつずつ実行する課題は、それほど難しいものはなかった。

 

「ええか?自分が会社に行く時も、営業で外回りする時も、

カラオケ行ってバカ騒ぎしてる時も、靴はずっと気張って支えてくれとんのや。

そういう自分支えてくれてるもん大事にできんやつが成功するか、アホ!」

一つ目の課題は靴磨きだ。

「偉大な仕事をする人間はな、マジで世の中よくしたいて純粋に思て生きてんねんで。

せやからその分、でっかいお金、流れ込んでくんねん。お金だけやない。

人から愛されたり、幸せで満たされたり、もういっぱいええもんが流れてくんねん」

次の課題はコンビニでお釣を募金する。

「この世界に闇がなければ光も存在せんように、

短所と長所も自分の持ってる同じ性質の裏と表になっとるもんやで。

たとえば、ひとりの作業が好きなやつは、人と会うと疲れやすかったり、

逆に人と会うのが好きなやつは、ひとりの作業に深く集中することがでけへんかったりするもんや」

課題は、自分の苦手なことを人に聞く。

毎日毎日課題は出される。

「食事を腹八分目におさえる」「人が欲しがっているものを先取りする」

「あった人を笑わせる」等々…。

『ええ…そんなこと』と僕は反発しながらも課題をこなす

トイレ掃除をして身なりを整える。頑張れた自分をホメる。自分の中で何かが変わる。

ガネーシャは、お気に入りのあんみつを食べて、パチンコをしている。

そんなガネーシャに僕は腹を立てながら、

本当に成功するのか疑いながら、日々の生活を送るようになる。

過去や現在の偉人(ナポレオン、ニュートン、ケインズ、手塚治虫、ビル・ゲイツからイチロウetcetc)

の話を聞きながら、

僕は自分の夢を叶えようと本気で、しかも楽しみながら暮らすようになる。

読むだけでも楽しめる愉快な本だ。

『え、こんなことで』という疑いは十分にある。

でも、人生一度しかないとしたら、やってみる価値はあるのかもしれない。

その結果が成功と呼べるものでないにしても、自分の何かは変化するのではないだろうか。

そしてこの本に書かれてあることで、自分の夢が本当に叶えるものなら、

それはそれで良しかも…。

(J)

 

「夢をかなえるゾウ」