中野 信子 (なかの のぶこ)
脳科学者。
東日本国際大学特任教授。
横浜市立大学準教授。
1975年生まれ。
東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。
医学博士。
2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。
著書に『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』、『脳はどこまでコントロールできるか?』『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』ほか。

常習的に平気でウソをつき、自分をよく見せようと主張をころころ変えるし、そのうえ罪悪感ゼロ。
ハイリスク・ハイリターンを好み、自分の損得と関係ないことには無関心。
とんでもない犯罪を平然と遂行するし、ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう。
人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。
傲慢で尊大であり、批判されても折れないし、懲りない。
つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなったら相手のことを悪く言う。
脳科学の進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきつつある。

サイコパスは自然淘汰されることなく、一定数生きのびている。
どうしてだろうか。
危険なことにも恐怖を感じにくいサイコパスには、危険がまじかに迫って通常ではパニックになりそうなときにも、冷静に判断する能力があるという。
また、サイコパスには、映画などのイメージがつきまとう。
レクターのように平気で犯罪を犯してしまう人のようなそんなイメージが・・・。
でも実際には、勝ち組のサイコパスは、企業の経営者や弁護士、政治家、外科医など、恐怖を感じにくいし、また恐怖を感じていては仕事になりにくい分野でも存在するという。
勝ち組サイコパスは、犯罪心理で浮き彫りにされた負け組サイコパスとは違うようだ。
そんなサイコパスの特徴をもつ人はおよそ100人に一人の割合で存在するという。

恐怖を感じにくいサイコパスの脳は、扁桃体の活動が低い。
扁桃体は、大脳辺縁系の一部で、耳より上の奥側、海馬の先のあたりにある領域で、左右両側にひとつずつある。
扁桃体は人間の快・不快や恐怖といった基本的な情動を決めて、いわば本能的に反応する部分だという。
脳は他の部分とも連携して働くが、眼窩前頭皮質との結びつきが弱いのがサイコパス脳らしい。
他にも扁桃体の活動が低い、眼窩前頭皮質や内側前頭皮質の活動が弱い、のが特徴になるようだ。
前頭前皮質では、人は社会的文脈を学ぶ。
恐怖や罪、恥から社会的な文脈を学び覚えていくのが、サイコパスの脳では結びつきが弱く、社会的文脈を学ぶことが難しいようだ。

プレゼンテーションなどは抜群にうまく、魅力的なサイコパスは、人を動かすのが抜群にうまく、共感性が低いにもかかわらず、人の表情を読み人の心を動かす。
IQが高いという俗説があるようだが、それはそれぞれのようだ。
本書では、そんなサイコパスの特徴をうまくいかせる方法や職業があるのではないかと模索している。

(J)

 

「サイコパス」