フィリップ・K・ディック
1928年~1982年 アメリカSF作家

第三次大戦後、放射能に汚染された地球では、生きている動物を飼うことは地位の象徴となっていた。
まずはフクロウが死んで、フクロウの後には他の小鳥が死んだ。
惑星移住計画が進み、地球が太陽を仰ぎ見ることもかなわなくなり、宇宙への植民はすすんだ。
戦争兵器として人間型ロボットが作られ、異星環境下でも作業できるアンドロイドへと変化する。

リック・デッカードと妻のイーランが飼っているのは電気羊で、本物そっくりだが、やはりニセ羊だ。
リックはどうにかして本物の動物を飼いたいと思っているが、何しろ値段が高い。
本当に生きた動物には希少価値がある。
だからこそどうにかして電気動物ではなく本物の動物を飼いたいのだ。
同じビルに住むバーバーの馬に子どもが出来ると聞き、売ってもらうように交渉するが駄目だった。
“猫なら安いから買えるよ”と彼は言うが、室内で飼う生き物は厭だ。

ディックの仕事は賞金稼ぎだ。
火星から地球に逃げてきたアンドロイドを殺し、その懸賞金を貰うことだ。
だから地球から出ることができない。
世界各地の警察にそれぞれの賞金稼ぎがいる。
命を懸けた仕事だが、懸賞金のかかったアンドロイドは莫大な金になる。

ディックの上司のブライアンから、主任のバウンティ・ハンターのホールデンが、アンドロイドに攻撃され、重傷を負ったと聞かされる。
昨日までピンピンしていたホールデンだ。
ディックはその後を継ぐべく動き出す。

今回のアンドロイド・ネクサス6型は、新型ユニットで高知能型だ。
見掛けは人間とそっくりなので、アンドロイドかどうかは検査をしないとわからない。
フォークト=カンプフ感情移入度検査法は、共感能力を検査する方法だ。
アンドロイドには人間のような共感能力はない。
だが、そのテストでアンドロイドだという結果が出たとしても、うまくアンドロイドを射止めることができるかどうかは分からない。
現に、ホールデンはやられたのだから・・・。
ホールデンが取り逃したアンドロイドは残り5人。
うまくいけば、本物の動物が飼えるかもしれない。

映画「ブレードランナー」の原作本である。
アンドロイドを追う人間と、その人間に追われるアンドロイドの闘いは、共感能力を持つはずの人間の心にある共感を非情にしなくてはいけない。
機械と人との違いを共感能力というのだから・・・。
そして、アンドロイドを追ううちに、ディックの心に芽生える共感の矛先とは。

アンドロイドは果たして電気羊の夢を見るのだろうか。
共感を失った者とは誰のことなのか。
ミステリー仕立ての本作は、人間の根本的な存在を問う。

(J)

 

 

 

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」