原田 マハ
1962年、東京生まれ。
関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年独立後フリーランスのキュレーターとして活躍。
’05年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。
12年『楽園のキャンパス』で第25回山本周五郎賞受賞。
著書に『本日は、お日柄もよく』『ジヴェルニーの食卓』『あなたは、誰かの大切な人』『異邦人』『モダン』『ラブコメ』(共著)などがある。

 

困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、
想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。
二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている。
三日後の君、歩き出している。

本文 抜粋

二ノ宮こと葉は、思いを寄せていた幼なじみでコピーライターの仕事をしている今川厚志と、かわいい花嫁の恵里ちゃんの結婚式で、伝説のスピーチライターといわれる久遠久美の祝辞を聞き衝撃を受ける。
涙があふれるほど感動するスピーチだったのだ。
それが、「言葉のプロフェッショナル」との出会いだった。

厚志君の亡くなったお父さんは、民衆党の今川篤朗で、その彼が末期のがんで議員としての人生に幕を下ろす時の感動的な最後の代表質問も、どうやら久美さんが背後にいたらしいと知り、増々興味を持つ。

こと葉は「トウタカ製菓」の社員だ。
入社五年目の会社の同僚で、もうすぐ結婚退職する同期の千堂千華の結婚式でのスピーチを頼まれている。
千華は某大手商社の役員令嬢で、お相手は某機器メーカーの社長御曹司だ。
披露宴での招待客は五百人。
「披露宴でウケるスピーチ」だとか「祝辞の述べ方、スピーチの極意」だとかノウハウ本のたぐいも読み、ネットでも検索したりするのだが、どうもしっくりこない。
そして出会った「言葉のプロフェッショナル」こと久美さん。
彼女なら救いの手を差し伸べてくれるかもしれない。
「スピーチヴァージン」のこと葉は、来月に迫った千華のスピーチ原稿の作り方の指南を受けに、久美さんのもとに行く。
この行動力は、こと葉には異例にことだった。
厚志君が王子様役を張ってたら、こと葉は舞台のソデに生えるキノコ役が立ち位置だったのだから。

本や辞書やうず高く積もっている小さな事務所で、こと葉はスピーチ原稿を書いてもらえると思っていたのだが、久美さんは自分で書くために手伝いをするという。
その翌日からこと葉はこの事務所に通い、自分のスピーチの原稿を書くために久美さんの指導を受けることになる。
指導の甲斐あり、こと葉は、結婚式当日、素直な笑いと感動あふれるスピーチをする。
そして、言葉の魅力に心から感動したこと葉は、久美さんの所に弟子入りすることになる。

千華の結婚披露宴で出会った、株式会社番通のコピーライター和田日間足(わだかまたり)は、厚志君のライバルでもある。
イケメンで仕事ができ、言葉を巧みに操る和田日間足ことワダカマと、仕事で「トウタカ製菓」で再び出会うことになる。
こと葉は、彼に興味と反発と好奇心を持ち、そして強く惹かれていくことになる。

厚志君は、周囲からの熱い思いに支えられて、次の総選挙で立候補することになり、こと葉も仕事を辞めて本格的に久美さんの所で仕事をするようになる。
そして、ワダカマとは選挙でも敵同士の関係になってしまう・・・かな。

ユーモアあふれる文体と、読む人を引き付けるストーリー展開は、とても面白く興味深く読んだ。
今のときを時めくコピーライターや、イケメンなど、此処までかというぐらい盛りだくさんだ。
自分のやりがいともいえる仕事を見つけ、自分の意思で自分の道を切り開いていくこと葉は、ちょっぴり?どころかたっぷり頼りないが、温かなその人柄は、心に染み入る言葉の天才かもしれない。
本書のタイトルである『本日はお日柄もよく』は、昔から結婚式の披露宴で使われる言葉の定番である。
美しい日本の、美しい言葉でもある。
筆者はこの言葉を本文中に効果的に使っている、“さすが!!”

(J)

 

 

「本日は、お日柄もよく」