逢坂 剛  おうさか ごう
1943年東京生まれ。
80年「暗殺者グラナダに死す」で第19回オール讀物推理小説新人賞を受賞。
86年に刊行した『カディスの赤い星』で第96回直木賞、第40回日本推理作家協会賞、第5回日本冒険小説境界大賞。
2014年、第17回日本ミステリー文学大賞を受賞。
『百舌の叫ぶ夜』『鵟の巣』ほか著書多数。

警視庁公安部特務一課の係長桂田渉は、極右といわれる遠山源四郎から遠山の弁護士村岡と共に、個人的に警護を頼まれて裏金を貰っていた。
その遠山のもとに過激派組織『東方の赤き獅子』から殺しの脅迫状が届く。

一年前に捜査2課から公安の特1課へ移り、桂田とコンビを組むことになった浅見誠也は、周囲から桂田に関する様々なうわさを聞いていた。
離婚歴があることや、取り調べがきついこと、公安では抜群に腕のいいデカであることなどである。
しつこいまでの調べ方や狙ったものに対しての徹底的な取り調べに驚嘆するとともに、公安で仕事をするのに必要なことを教えられた。
いっしょに仕事をはじめて桂田の、きつい取調べには抵抗もあったが、ある種の好意と敬意を抱くようになった。
桂田は、浅見には目をかけていた。

その浅見のところに、警視庁刑務局・特別監察官である津城俊輔が訪れる。
桂田に贈収賄や汚職の疑いがあり、探ってほしいというのだ。
確かに、桂田の背広は高級品だし、持ち物も一流品だ。
その上、一流の食事やクラブへも通い、警視庁の一係長としては贅沢ではある。
心に秘めた葛藤を胸に浅見は桂田と共に仕事をすることになる。

ほぼ同時に発生した二つの事件。
一つは以前より桂田と浅見が担当していた丸東商事の人質事件だ。
《隼》と名乗る男が、社内に人質8人とともに立てこもり、身代金を要求するが、お金も残したまま忽然と姿を消した。
もう一つは遠山源四郎が暗殺された事件で、愛人宅のマンションのベランダで、射撃される。
一見関係がないように見えるこの二つに事件には、どちらも桂田の影があった。

百舌のような冷徹で冷たくクールな目を持つ桂田と、心に葛藤を持ちながらも仲間を信じたい浅見が繰り広げるハードボイルドな世界。

二つの事件に繋がりを指摘した浅見は、自らの推論を立てていくことになる。
やがて思いがけぬ方向へと進むサスペンスは、政治と金、権力と保身を描く。
最後に浅見が出した結論を、自身はどうとらえるか。
『やっぱり』なのか、『えーーー』なのか。迷うなあ。

(J)

「裏切りの日日」