穂村 弘  ほむら・ひろし
1962年北海道生まれ。
歌人。
上智大学文学部英文科卒。
’90年に歌集『シンジケート』でデビュー。
短歌にとどまることなく、エッセイ、評論まで広く活躍中。
歌集に『手紙魔みれ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』『ラインマーカーズ』、エッセイ集に『もうおうちへかえりましょう』『にょっ記』『整形前夜』など。
対談集に『どうして書くの?』、共著に『回転ドアは、順番に』(東直子氏)がある。
短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞を受賞。

とにかく、面白い!!
電車の中で読んでいて、文章のうまさへの唸りと笑いが込み上げてきてしまった。
思わず周りを見てしまう。

以前にあるテレビ番組で、真面目にコメントをしていた穂村さんを見ていただけに、この本とのギャップに、思わず???。

パニック発言
十数年前のことになるだろうか。
或る女性ミュージシャンの自殺未遂が報じられたことがあった。
新聞によると、遺書らしいものはなかった。
ただ、彼女の部屋の壁に大きく次の言葉が記されていたという。

「皆憎」
うーん、と私は思った。
これは……、凄い迫力だ。
ネガティブな内容自体のインパクトもあるが、「送り仮名がない」ところだ。
これは「皆憎い」では駄目(?)なのだ。
漢字二文字に凝縮されてしまった表現が、極限状態にいる者の心を生々しく感じさせる。
私はもともと彼女のファンだったが、この記事をみてますます好きになった。
一命をとりとめた彼女は今も優れた表現者として活躍している。
本文 抜粋

天使の呟き
携帯電話の普及に伴って公衆電話の姿が消えているが、その他にもなくなっているものがある。
例えば、駅の伝言版。
これが実際に使われていたところを知っているのは、もはや旧世代ということになるだろう。

「まゆちん 20分待ちました。
先に行ってるね。
ユミ&グー」

私の記憶では、大体こんな感じの待ち合わせに関するメッセージが多かった。
なかにはこんなのもあった。
「タクロー、大好き! さきっぺ」

知らんよそんなこと、と思う。
でも、これも一種の伝言には違いない。
そんな伝言版史上、といっても私がみたなかでの話だが、最も忘れがたいメッセージは次のものだ。
「犬、特にシーズ犬」
これに出会ったのは確か昭和の末期あたりで、どこの駅の伝言版だったか覚えていないのだが、いったんその前を通り過ぎた後、引き返してきてみつめてしまった。
勿論、私宛の伝言というわけではない。
本文 抜粋

歌人としての言葉へのこだわりがあるのだろう。
言葉が表す微妙なニュアンスや響が、表わされているモノの持つイメージを見事に表現することがあるように思う。

絶望の宝石
小学校のときはいろんな罪人がいたもんなあ
給食のこすヤツ
トイレでウンコするヤツ
女と仲よくしたヤツ
『幸せのひこう機雲』(安達哲)より』
本文 抜粋

あっという間の時間だった。

(J)

「絶叫委員会」