重松 清(しげまつ きよし)
1963年岡山県生まれ。
早稲田大学養育学部卒。
出版社勤務を経て執筆活動に入る。
1999年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞。
2001年『ビタミンF』で124回直木賞受賞。
話題作を次々発表するかたわら、ライターとしてルポルタージュやインタビューなどを手がける。
『定年ゴジラ』『トワイライト』などがある。

子どもが大人になって、自分の父親が大人になった自分と同じ年に戻りそして父と子が同じ年で二人が語る。

「流星ワゴン」の語り手/主人公である永田一雄は三十八歳。
父親は故郷で癌で闘病。
その見舞いの帰りに、駅のホームに降り立った彼は、〝死んじゃってもいいんだよな”という気分になる。

一雄の妻の美代子は最近外泊して明け方近くに家に帰ることが増えている。
一人息子の宏樹は、私学の中学受験に失敗し、地元の中学に進学するが、同級生からのいじめを受けて家に引きこもってしまう。
仕事でもリストラされた一雄は、どん底の精神状態にいた。

暗がりの中に赤ワイン色のような色をした古い型のオデッセイが停まっている。
その車の中には交通事故で亡くなった橋本さんと健太君が乗っていた。
一雄はそのオデッセイに乗り込み、過去の大切な場所への旅に出かける。
〝自分は死んでしまったんだろうか…”

そして、その旅の中で彼は今まさに死のうとしている父親に出会うことになる。

やり直しが効かない、出来ればもう一度やり直したいと思う、人生のターニングポイントへ、一雄と一雄の父忠雄の旅は始まる。

父親が嫌いだった一雄。
故郷の父の会社を継がず、東京に出て自分の人生を歩んできた。
順調だと思っていた自分の人生の場面に戻るにつれて、いかに自分が何も気づかずに過ごしてきたかが見えてくる。

父親の忠雄も息子の一雄との関係を修復させるためにきた。
すれ違いの人生を過去に戻り、再度やり直すが、実際の人生は何も変わらない。
嘆き苦しみ後悔する。
そして、その果てに得たものは…。

どこにでもいそうな極々普通の人である永田一雄。
そして、生きているうちに誰もがしてしまうようなそんな日常の何気ない会話。

振り返ればこうすればよかったとか、ああいう風にも出来たとか、色々と思いめぐらす。
過去へのタイムスリップは、もう死んでしまった橋本親子との旅。
その親子にも成仏できない理由があった。

五分と五分で語り合う一雄と忠雄の親子。
一雄は死んでしまったんだろうか?
そして、死にゆく人に最後のもたらされる心の平安に向けて物語は興味深く進む。

(J)

「流星ワゴン」