乃南 アサ Nonami Asa
1960年(昭和35年)、東京生れ。
早稲田大学中退後、広告代理店勤務などで、作家活動に入る。
『幸福な朝食』が日本サスペンス大賞優秀作になる。
『凍える牙』で直木賞受賞。

✿✿幸福について
最近の人ってあんまり「ありがとう」って言わないでしょう。
「すいません」て、言うのね。
あれは、済いません、なんですから、本当は。
それが「すいませ~ん」で済ませちゃうっていうことは、あんまりありがたがってないっていうことです。
本当は結構ありがたい状況なのに、ありがたく思ってないのかも知れないし、軽く流してるのかも知れないんだけど。
でも「ありがとう」という意識は持っていた方がいい。
ありがたがることがありがとうなんだから。

ー中略ー

もちろん幸福な時でないと、なかなか「ありがとう」って言えない。
自分がひねこびている時とか、不幸のどん底にいるなと勝手に思い込んでる時は、あんまり人にありがとうって言えない。
幸せっていうものが、人がくれるものではないから、特に恋愛中なんか、彼氏が持ってきてくれるもののように思ってるけど、でも、私が傍から見てたらみんな結構、幸せなんだと思うよ、こんなこと言ってるけど。
ただ、ないものねだりで、それも減点法で、あるもののことは数えないで、ないものばっかり数えてるように見える。
本文 抜粋

自分の考えがある感じって、すっきりしてますよね。
それが、自分の人生への自信と、今までの苦労を知恵にしている、そんなものを感じさせます。
自分の言葉で、ズバリと言うところがまた魅力を感じさせますし、女性に心理にピカイチと言われる所以でしょうか。

痛いところを突かれるのは、少々苦手でも、痛みを感じた分、いろいろな知識や生活の知恵や、はたまた、自分を知る手掛かりが身につくのかも…。

✿✿忘れられない
二十代前半の頃は、それこそ、筋肉痛も翌日正しく出るし、疲れというものはすぐに出てすぐに癒えるものだという感覚があると思うんですけど、からだのほうはそうであっても、心のほうは、そんなに簡単に、一晩寝れば癒えるというものではないので、それ相応に時間がかかるのは当たり前だと思っていていいと思うんですよ。
だから、そんなに次々、しゃきしゃきと変えられるものでもないし、人間の心って、戸板返しのようにパッタンパッタンなるわけではないということを、最初から知っておいていいと思いますよ。
心の色合いは、時間を追って少しずつ変わっていくものだから、すぐに元気になって、すぐに今の人に夢中になってということを望むほうが、ちょっと都合がよすぎるような気がしますけどね。
本文 抜粋

✿✿弱い自分を認める
まず、傷ついている自分を認める。
傷ついていない振りをして、後でしょんぼりするでしょう。
でも、私はこのことを言われると傷つく。
こういう目に遭うと傷つく。
どんなに好きな人であっても、これだけはされたくない、言われたくない。
そういうふうに感じてこっそり傷ついて泣いている自分をまず認める。
そんな私が嫌だとかなんとか言っても、嫌でもあなたなんだから、嫌でもとりあえず認める。
受け入れる。
それもあなたのうちの一つなんだからというように。
本文 抜粋

(J)

「ダメージ -そこからはじまるものー」