今邑 彩
1955年、長野県生まれ。
都留文科大学英文科卒。
会社勤務を経て、フリーに。
1989年(平成元年)鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と13の謎」に応募し13番目の椅子を『卍の殺人』で受賞。
以降、推理小説を中心にホラーなどを手がける。
『「裏窓」殺人事件』『そして誰もいなくなる』『つきまとわれて』など。

モノローグからスタートするこの物語。
モノローグで殺人の動機や決め手となることが語られる。
残忍で非道ともいえる殺人は、傷ついた心が成せた殺人ともいえる。

犯人と思われる人たちが確実なアリバイで次々と消え去っていく中、真の犯人は意外な所から現れる。
解離性障害を扱ったこの物語は、また、児童虐待を扱うものでもある。

解離  dissociation
通常われわれの体験は、自己意識、感情、身体感覚、知覚などが統合されており、過去、現在、未来が連続したものと感じられる。
しかし、このような自己の統合性や連続性が失われることがあり、これが解離現象である。
解離現象には、我を忘れて熱中するといった健康なものから、解離性健忘(Dissociative Amnesia)、解離性遁走(Dissociative fugue)、解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder)といった解離性障害(Dissociative Orderまでと幅広い体験が含まれている。
このような解離現象が生じるには、心的外傷体験、幼児期の重要な他者の喪失、家族からの無視や拒否、社会的な孤立などといった外的要因、空想への陥りやすさや被暗示性の高さといった生来的な素因、身体的な病気や長期間にわたってストレスを受け続けることなどから自己を統合する心的エネルギーが低下するといったことが考えられる。
解離の概念は、フランスの精神病理学者であるジャネー(Janet,P)によって明らかにされたが、フロイト(Freud,S)の抑圧(repression)の概念が広く受け入れられることによって忘れ去られていた。
しかし1970年代になり、解離性同一障害への関心の再燃をきっかけにして、再度注目されるようになってきた。
抑圧は、無意識内容が意識へ侵入することへの水平方向の障壁であり、解離は、自己をいくつかに分割する縦方向の障壁でる。
⇒多重人格etc

カウンセリング辞典 より

萩尾晴海は、偶然の出会いから西村麗子とルームメイトになる。
東京の大学に入り、下宿を探して不動産屋で麗子に会う。
どんな人かも良く知らないままに急ぐからと言うことと、絵に描いたような理想的なルームが気に入ったからである。

ルームメイトになった晴海と麗子だが、始めは見るからに良家の箱入り娘という印象の麗子だったが、1か月も経ってないのに派手な服装に変化していた。

ある朝のテレビで、池袋の英会話スクールを経営しているロバート・パーカーさんが殺されたというニュースが流れる。
粘着テープで手足を縛りあげられ、ナイフで全身を切り刻まれたあげく、生殖器を切り取られとという。

テレビの映像の生々しい血だまりの跡がある現場の映像が映し出され、晴海は眠気も食欲も吹っ飛んでいた。
しかし、麗子は食い入るように画面を見ている。
そう別人のようになった麗子が…。

しばらくして、麗子は行方不明なり、死体で発見される。
お互いに干渉しない約束で始めた共同生活であったが、学校の先輩の工藤と主に、麗子の事件を追いかけていくうちに、麗子には、平田由紀と言う名や、ゆりと言う存在やマリ、また青柳麻美と言うなの女性でもあったことがわかる。
『解離性障害』を疑う工藤。
そして、その背後にあったであろう虐待の事実を求めて晴海は奔走する。

警察の捜査や、フリーライターの武原からの情報をもとに、隠されたテープレコーダーに犯人の手掛かりがあるらしいという事が分かる。
そして、その手ががりのテープを手に入れた武原も殺され、“前代未聞のきわめて特異な事件”は、意外な犯人へと展開する。

『24人のビリー・ミリガン』で大反響を呼んだ解離性障害であるが、主格の人格は、自分の犯した殺人を知らない場合もあるらしい。

少女連続誘拐バラバラ殺人事件は、29歳のレンタルビデオ店の店員が6人の少女を殺し、その残酷な手口も話題になったが、精神科医から『解離性障害』の診断報告がなされ、被告の中にいる別人格の犯行だったという説が出る。

最終的に工藤が手にしたテープの中の犯人はだれ?
そして、犯人の目的は…?

(J)

「ルームメイト」