田口 ランディ  Taguchi Randy

東京都生まれ。
広告代理店、編集プロダクションを経て、ネットコラムリストとして注目される。
初の長編小説『コンセント』がマスコミに絶賛され、ベストセラーになる。
田口 ランディの短編小説集。
『縁切り神社』『アイシテル』『エイプリルフールの女』など、男女のレアルな関係が描かれている。

読みやすくて、セクシャルで、楽しめる内容のものが多い。
何とも表現しにくい微妙な女心を適度に笑いを誘うように書かれていて、笑いながら、また、少し考えながら読む。

『縁切り神社』

京都の町をそぞろ歩いていたら、奇妙な神社に迷う込んだ。
「安井の縁切り神社」という看板が出ている。
なんだろうと思い、赤い鳥居をくぐって境内に入っていくと、玉砂利を敷き詰めた細長い空間に、ぎっしりと無数の絵馬が並んでいた。
……
最初に目についたのは、女子高校生の三人組がそれぞれに書いたらしい三枚の絵馬だった。
同じような丸い文字で黒の太めのサインペンが使われていた。

『二年B組の秋山美佳との悪縁が切れますように』

三人とも同じ文面だった。
それが三枚並んで吊り下げられていたのだ。
「なに、これ?」私はぞっとして思わず唇を押さえた。
陰湿だと思った。
ひどい悪意を感じた。
本文 抜粋

季節の変わり目に体調を崩した主人公の水野季実子は、体と心の調子を整えるために、京都旅行をする。
そこで立ち寄った『縁切り神社」で、彼女は、自分の名前と、1か月前まで付き合っていた深田拓也の名前を見つける。

「水野季実子と深田拓也の悪縁が切れますように」

得体の知れない憎しみが心を去来し、その悪意が伝染してくるような不快感。
一体誰が…?
何故…?

ここにこの絵馬を置いた女を、私は知っているのだろうか?

そして、自分が体調を崩したのは、拓也との別れたからだと否定できなくなる。
未練が体調に影響している。

「水野季実子と深田拓也の悪縁が切れますように」

本当は、拓也に女がいることを薄々感じていた。
不躾な時間になる携帯電話。
ときどきキャンセルされた日曜日の約束。
見て見ぬふりをしてきた。
『私には関係ない』と無視した。
その消され続けた女が姿を現した。

「水野季実子と深田拓也の悪縁が切れますように」

その絵馬にはM.O.というイニシャルが書かれてあった。
境内の隅のベンチから、私は携帯電話を掛ける。
拓也に…。
そして拓也の口から真実が…。

さて、結末は如何に…?
男女の仲って不思議ですね。

(J)

「縁切り神社」