交流分析士准教授  山本 昭一
「TA実践研究」の中の論文。

この研究の目的は、一般的な高校生のデータ分析を基に、思春期の子どもの自尊感情の現状と課題を考えることにある。

自尊感情(self-esteem)
自分自身に対する肯定的な感情。
自分自身を価値ある存在としてとらえる感覚。
ローゼンバーグ(Rosenberg,M)は、自分自身のことを「非常に良い」とする感情と「これでよい」とする感情とを区別し、とくに後者を「自尊感情」と定義している。
乳幼児期の母子関係における母親の愛情、全面的な受容が子どもが自尊感情の基盤であり、児童期、青年期の所属集団からの承認や他者との比較を通じて形成される。
高い自尊心を有する方が適応的であるとする見方が一般的だが、劣等感の補償として防衛的に高い自尊感情を持つ場合があることも指摘されている。
「カウンセリング辞典」より

この論文では、自尊感情を社会的自尊感情と基本的自尊感情に分けて理解する。
子どもの自己主張をほめることで基本的自尊感情が育ち、子どもの行動に肯定的なフィードバックを与えることで社会的自尊感情を育てる援助が出来るという。

子どもの自尊感情の低さの背景に、

  1. 自尊感情が他者との比較で捉えられている。
  2. 子どもの成長に対応した関わり方、特に自己主張の重要性が理解されていない。

などの問題が指摘されている。

思春期の脳の発達から、指示的な関わりに感情的な反応をするときである。
反応が激しかったり、塞ぎ込んだりする。

動物的な本能の座とされる脳幹と古い皮質がある。
思春期の若者は恐れや怒りの中枢である扁桃体が一番活発に働く。
思春期の子どもは、本能的に身を守ろうと感情を爆発させる。

感情抑制のメカニズムは、前頭前野が扁桃(感情の中枢)に働き、短絡的な行動を抑え、欲望が爆発的な凶暴な行動に向かうのを抑える。
脳細胞の樹状突起が過剰生産される開花期を迎え、思春期の子どもは様々な経験を通じて、感情をコントロールする力を身につけていく。

基本的自尊感情と社会的自尊感情がともに高いタイプは、相手を尊重する言い方を学ぶことで、感情をコントロールし、共感や受容も身に付く傾向がある。
基本的自尊感情は高いが、社会的自尊感情が低い場合、意欲に欠け、親に依存する傾向がある。

基本的自尊感情は低いが、社会的自尊感情が高い場合は、ほめられることで社会的自尊感情を維持しているので、失敗したりエネルギーが切れたり批判を受けたりしたとき、落ち込み、攻撃的な言動になりがちである。

基本的自尊感情も社会的自尊感情も低い場合、誉め言葉に過剰反応し、何気ない指摘に傷つきやすい。
自分から目標を見つけて、出来たら自信をもたせて、意欲を引き出す。
一緒に喜ぶことも基本的な自尊感情を育てることになる。

色々と物騒な事件が起きている。
感情のコントロールは、今、とても大切でますます重要になっている。
脳のシナプスうんぬんと言われても困ってしまうが、人と共に共感し、痛みを分かち合うことは、自尊心を磨く必須条件である。

(J)

TA実践研究 「思春期の子どもの自尊感情を育てる関わり方」 -子ども理解の深化と対話分析の活用ー