乃南 アサ NONAMI ASA
1960(昭和35)年、東京生れ。
早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家になる。
『凍える牙』 『6月19日の花嫁』『団欒』『風紋』など
多数の著書がある。

『団欒』には5つのミステリーが書かれている。
どの作品も短編ながら、読みごたえがある。

「ママは何でも知っている」
「ルール」
「僕のトンちゃん」
「出前家族」
「団欒」
などである。

「ママは何でも知っている」は、“家族なんだから!”を合言葉に家族の中では秘密を作らない、作れない家族のお話。

優次は、高校で美術を教えている教師。
専門は彫塑である。
優次の高校に新しく教師として赴任してきた加奈に恋心を抱き、交際する。
加奈が学校経営者の娘とは知らずのことである。
やがて、婚約ということになり、逆「玉の輿」であるであるこの婚約に優次の両親も大賛成。
将来は、学校経営者としての地位も約束される。
はずだったのだが・・・。

一緒に暮らしていくうちに、夫婦の部屋にママが入ってくる。
“いいじゃあないの家族だから!”
お風呂に入っていると、ママが入ってきて背中を流す。
“いいじゃあないの家族なんだから、遠慮することないわよ。”

当然ながら、“夫婦のおつとめ”についての話も出る。
ママが娘の排卵日を優次に伝え、にっこりとほほ笑む加奈の顔を眺めながら、どんよりとした気分でいる優次だった。

加奈の美しい笑顔にどんなことも耐える覚悟だったのだが、やがて優次は、イライラとするようになる。

そんなある日、可愛がっていたペットのポメラニアンのメリーが死ぬ。
その骸をポリ容器の黒いビニール袋に入れて、普通ゴミとして出そうとしている家族を見たとき、優次は、やがて来るかもしれぬ、自分の運命を悟ったのかもしれない。

ミステリーという小説に救われる思いもするが、これに近い家族居るかも?
この家族とそっくりだったら怖い~。

出前家族は、妻を亡くした可能實が主人公。

彼は、毎朝早くに起きて、家の掃除を済ませ、朝食を済ます。
白い炊き立てのご飯を仏壇に供え、線香を焚く。

そんな彼の耳に、上の階に住む長男夫婦の物音が響く。
水道の流しっぱなしの音。
孫たちのバタバタした日常の物音や会話。
煩いながらも自分の生活をしている實だった。

そんな時に、テレビで出前家族の放送があった。
あたかも本当の家族のように振る舞い、寂しい老人を慰めていて、なかなか好評だという。

水泳クラブでの知り合いと、羽目を外して過ごして、何となく調子の良くない日々を過ごしていた實の元に、3人の家族が来る。

『これが噂のレンタル家族だ』と思った實は、息子夫婦の派遣したものと思い、仲良く過ごすことを決めて良いじいちゃんを演じる。
楽しいゲームをするように一家団欒をすごす實だった。

その後、身体の具合が悪くなって入院した實の元に、レンタル家族の3人が現れる。

そう彼は勘違い?呆けていたのだ。
レンタル家族だと思っていたのが本当の家族で、本当の家族だと思っていた家族が、実は赤の他人だったのだ。

本物の家族と偽物の家族が遺産がどうのこうのと耳元で煩い。
ぼんやりする頭の中でパニックになりながらも實は考える。
“ああー、うるさいな、どいつもこいつも。
どうする、惚けた振りのままで、行くか。”

元来意地の悪い人間ではなかったつもりの實だが、可もなく不可もない人生を、安全に歩んできた。
ここにきて急に、最後に1つ、ちょいっとした悪戯がしたくなった。

この作品もなかなか面白く読んだ。
人生の本当に最後の最後に實が見た世界。
いろいろな事があったであろう人生の最後の悪戯。
死後の御みあげかな!

(J)

「団欒」