福岡 伸一

新書大賞・サントリー学大賞
ダブル受賞作品

福岡 伸一(ふくおか しんいち)
1959年東京生まれ。
京都大学卒。
ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学教授。
専攻は分子生物学。

DNAの二重ラセンは、お互いに他を写した対構造をしている。
そして二重ラセンが解けるとちょうどポジとネガの関係になる。
ポジを元に新しいネガが作られ、元のネガから新しいポジが作られると、そこには二組の新しいDNA二重ラセンが誕生する。
ポジあるいはネガとしてラセン状のフィルムに書き込まれている暗号、これがとりもなおさず遺伝子情報である。
これが生命の“自己複製”システムであり、新たな生命が誕生するとき、あるいは細胞が分裂するとき、情報が伝達される仕組みの根幹をなしている。
本文抜粋

「生命とは何か」「命とは何か」
その問いは、宗教・哲学、そして心理学など様々な学問の分野で様々な答えがある。

生物学の中でもいろいろな分野があるようだ。
「分子生物学」という分野から生命の不思議がDNAや、アミノ酸・タンパク質・色々な動物実験などの研究を元に本書は書かれている。
そして、生命科学の発展に寄与した人が、どういうことを歴史に刻み、また、どういう風にしてそれを成し遂げたかが書かれている。

この本、今までの遺伝子学の本とか生命科学の本と感じが違う。

ただ単に、研究データや専門分野のことを書いているだけでなく、その発見に至る色々なエピソード、つまり、メディアなどに取り上げられる発見に、どれほどの努力と時間が、どういう風に注がれているかということも書いてある。
単なる苦労話?といえばそれまでだが、それが結構面白い。

1968年、ワトソンが出版した 『二重らせん』は科学読み物としては異例のベストセラーとなった。
DNA構造の解明競争にまつわる研究者たちの赤裸々な実態、不安や焦燥、猜疑心、嫉妬やねたみなどがストレートな筆致であますところなく描き出されていた。
人々は暴露本を面白がった。
しかし、多くの読者が気づかなかった事実がある。
この本はまったくフェアではなかったのだ。
著者ワトソンだけが、無邪気な天才という安全地帯にあって、他の人々はあまりにも戯曲化されすぎていた。
本文抜粋

「生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである」
「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。」
「生命は動的平衝にある流れである」
「内側の内部は外部である」

自らの研究テーマは「膵臓」。
生命体であるマウスを、ノックアウト(遺伝子操作)マウスにして実験。

ニューヨークマンハッタンのあるロックフェラー大学から、ボストンのハーバード大学と、「膵臓」の研究に明け暮れる彼が、自らの研究チームが立てた理論が、そのノックアウトマウスに、見事に覆される。
そして、『生命」というものの見事な造形が、筆者の鮮やかな文章とともにハッキリと伝わる、そんな本である。

(J)
「生物と無生物のあいだ」