J.D.Salinger      村上 春樹 訳

「ライ麦畑で捕まえて」で有名な作品。

僕がペンシー・プレップスクールをあとにした日のことから話を始めよう。
ペンシー・プレップはペンシルバニア州のエイジャーズタウンにある学校で、君もたぶん名前を聞いたことがあるんじゃないかな。
少なくとも広告くらいは目にしているはずだ。
本文抜粋

ホールデン・コールフィールドは、クリスマス休暇前に、通っていた学校から退学を言い渡される。
予定日を待たず、学校を飛び出したホールデンは、自宅のあるニューヨークに戻るが、帰宅予定の水曜日までの数日間を、親に見つからないように、家の外で過ごすことになる。

兄のDBは小説家で、今は、ハリウッド映画の脚本なども手掛けている。
妹のフィービーは、まだ小学生。
ホールデンは、この二人を心底愛している。

ニューヨークで友人・知り合い・ガールフレンドに電話し、出会い、お酒を飲み、煙草を吸い、時間を過ごす。
やくざな娼婦にお金を取られ、純粋な尼僧に感動し、いらないと言っているのにもかかわらず、こころからの寄付する。
頼りの先生に説教され、昔の先生を、ゲイと誤解しそうにもなる。

人を殴る勇気もなく、言いたいことも言えない。
見栄とも取れる言葉を言い、一人前に振舞おうとするが・・・。
そんな自分を素直に認めながらも、知性を求め、理想を追う。

思春期の小説として名高いこの作品。
なにかが捻じれて、正直になれない。
それでいながら、寂しくて堪らない。
人を求めて彷徨うながらも、心は満たせない。
そんな男の子の心境がウィット?に富んだ会話に溢れている。

切なく、悲しくそして、何故か心惹かれる。
そんな作品でもある。

フィービーがぐるぐる回り続けているのを見ているとさ、なんだかやみくもに幸福な気持ちになってきたんだよ。
あやうく大声をあげて泣き出してしまうところだった。
僕はもう掛け値なしにハッピーな気分だったんだよ。
嘘いつわりなくね。
どうしてだろう、そのへんはわからないな。
ブルーのコートを着てぐるぐると回り続けているフィービーの姿がやけに心に浸みた。
というだけのことかもしれない。
いやまったく、君にも一目見せたかったよ。
本文抜粋

思春期 puberty
第二次性徴の出現に伴う心身の変調が経験される数年間をいう。
子ども時代を締めくくり、大人時代の幕開けに備える過渡期的な時期である。
身体が自分の意思を超えてますます性的な存在になる経験と、やがて親からの独立し個として立ってゆくことへの予感がこの時期を象徴する。
思春期の若者は、あるときは独自の理論を振りかざして個を主張し、また別のときには大人の保護を強く求める。
子どもでも大人でもありながら、そのどちらにもなりきれない点、彼ら自身にも自分の本質がつかめず、他者が理解できるような形で自分を表現できない点、時々刻々変化する感情を持て余しがちな点、中間人としての彼らの困難がある。
「カウンセリング辞典」 より

(J)

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 The Catcher in the Rye