津村 記久子

長瀬 由紀子は、パイプ椅子の背もたれに手を掛け、背後の掲示板を見た。
そこには、ポスターが2枚貼られている。

一枚は、NGOが主催する世界一周のクルージング。
そのクルージングの7料金は、ナガセが働いている工場の1年間の給料とほぼ同じ金額だった。

時給八百円のパートから月給手取り十三万八千円の契約社員の昇格して今の給料になった。
友人のカフェで工場が終わった後バイトして、パソコン教室でアルバイトする。

そんな彼女が、世界一周のクルージングを夢見た。
ガタがきている自宅の修理費のお金のつもりで貯めた貯金。

自宅のポトスを眺めながら、いろいろな事を考え、そして夢見る。

母親と二人暮らしのナガセの家に、旧友りつ子が子供を連れて来る。
夫と別れるという彼女。
一人娘の恵奈と共に居候となる。

図鑑を見る恵奈の横で、ポトスのてんぷらを考えるナガセ。

生活に追われ、こころの何処かが何かを求める。
そんなナガセの気持ちにわたしの何かも共感する。

淡々とした文章。
何気ない出来事でもありながら、友人を心配し、心を痛めながらも人を信じ、戸惑いながら生きる。
『幸せってなんだろう』って、本を読み終えて外の景色を見ながらふっと考える。
あたり一面の桜が、『幸せ』って言いながら、咲いているように夢を見る。
そんな私が居る。

(J)

「ポトスライムの舟」