貴志 祐介

『今ごろになって、一連の事件の顛末を書き記す気になったのには、ちょっとした理由がある。
多くのものが灰燼に帰した、あの日から、十年の月日が経過した。』

『わたしは半ば意地になって、思いつく限りの人間にインタビューしては、矛盾点をつきあわせていったが、その過程で、否応なく、ある事実に気づかされた。
誰一人、自分にとって不利な方向に記憶をねじ曲げていた人間はいなかったのだ。』
本文 抜粋


主人公の名前は、渡辺 早季。
二百十年の十二月十日、神栖66町に生まれる。
母の瑞穂は、図書館司書という要職にあり、父の杉浦敬は、神栖66町の町長であった。

早季の住む神栖町は、社会を統べる装置として、呪術がつかわれている。
人間は思い通りに物を動かす呪術を操るようになり、「神の力」を手に入れた。

子供たちは、ある年齢からサイコキネス(念動力)を磨き、そのサイコキネスを使い、社会を管理するようになるべく、全人学校に通う。
その全人学校に通う、瞬・覚・真里亜・守、そして早季の5人組は、ともに、班員として、様々なことを経験していくことになる。

しかし、ある時早季は、昨日まで同じように勉強していたはずのクラスメートが、突然とクラスから消えていることに気付く。
だが、クラスメートは何の不思議も疑問もなく、当たり前のように生活している事に気づき、この環境に疑問を持つ。

いったい何が行われているのか?
居なくなったクラスメートは、どうしたのか?
そして、余りにも守られている生活はどうしてなのか?

様々な事に疑問を抱きながら、5人は、規則を破り、行ってはいけないと言われている所に行く。
そこで出会ったものは・・・・・・・。

業魔の話

今から80年ほど前の話。
村には一人の少年が住んでいた。
とても頭の良い子供だったが、一つ欠点があった。
その欠点は、成長するにつれて、しだいに誰の目にもあきらかなものになってきた。

少年は、自らの頭の良さを誇るあまり、あらゆるものを小馬鹿にしていたのだ。
学校や村の大人たちから教わることを、表面的にはよく聞くふりをしていたが、大切な教訓はけっして彼の心には届いていなかった。
少年は、大人たちの愚かさを笑い、この世の倫理すら冷笑するようになり始めた。
少年は、しだいに友達の輪からも遠ざかるようになった。
孤独だけが彼の友人になり、話し相手になった。
孤独は、業の苗床になる。
独りぼっちになった少年は、思索に耽ることが多くなった。
そのうち、考えるべきではないことを考え、疑ってはならないものを疑うようになった。
悪い思考は、とめどなく業を蔓延らせていく。
そして、少年は、知らず知らずのうちに業を積み重ね、しだいに、人間でないものの、業魔へと変わっていったのだ。

本文 抜粋

全巻3冊のSF小説の大作。
これから先の物語は、読んでからのお楽しみ。

東京が廃墟となり、魑魅魍魎の世界となった未来。
どんな世界がそこにあるのか?

想像を絶する生き物たち。
そしてそこに潜む謎。

この本のように、人間が生きていく可能性は決してゼロではないだろう。

私たちは、何を良しとし、どんな風に生きていくのか。
何が起こるか予測がつきにくくなっている現在。
そんな中で、色々と考えることを楽しみながら、生きていくのも、また、楽しみかと思いながら読む。

(J)

「新世界より」