E・キューブラー・ロス著 川口 正吉 訳

だが、知覚ある動物は死の脅威をもつ。
危険が迫るとき、動物は本能的に恐怖を感じ、そこから逃げようとする。
意識あり知性ある人間は長期にわたって死を恐れる。
避けられない死を恐れることが矛盾であり不合理であることを知りながら、人間は極度に死を恐れ、死から顔をそむけようtpする。
そして死の恐怖を克服するために宗教と哲学を生み出し、死生観を考え出した。
死とは何かがわかれば、まだしも受容できるとのはかない望みに過ぎないだろう。
本文 あとがき より  抜粋

危険から護れるよう祈るのではなく、恐れることなく、直面しよう。
わたしの苦しみの納まることを願うのではなく、それを克服する心をこそ願おう。
人生の戦場で同胞軍を求めるのではなく、われわれ自身の力こそ求めよう。
救われることを心配しながら求めるのではなく、
わたしの自由を勝ち取る忍耐をば望もう。
わたしが、自分の成功のためのみにあなたの慈悲を当てにする卑怯者ではなく、わたしの失敗のなかにあなたの手の握りを発見する勇者でありますように。
ラビンドラナート・タゴール
本文 抜粋

クオリティ・オブ・ライフが言われる今、「死」や「死にゆくこと」の自由と勇気・決断などが必要とされるようになってきた。
人間、いつ、どこで、どのような死を迎えるのかわからない。

1971年初版のこの著書は、その当時、タブーとされてきた「死の宣告」例えば、ガン末期の人に病状等を伝えることを通してその人々の「死の受容」を
推し進めたキューブラー・ロスの本である。
愛する人を亡くす悲しみ対象喪失を各段階に分けてプロセスを紹介した本である。

対象喪失(object loss)
フロイドが、『悲哀とメランコリー』において、詳しく提起した概念で、大切な対象を失うという経験を包括的に意味する用語である。
対象の対象としては、愛や依存の対象である大切な人をはじめとして、馴染んだ生活環境、身体の機能や器官の一部など多様な内容を含んでいる。
カウンセリング辞典より

第1段階  否認と隔離
「違います、僕は違います、それは真実ではあり得ない」
告げられることを半ば知りながらも、もしかしたら間違いではないかと疑う時期
不安にみちた否認は、早すぎる告知やよく知らないひとからだしぬけに知らされた場合。
また心の準備を考慮せず、突然にしらされた場合などにも起きる。

第2段階  怒り
「いったい、どうしてこんなことになってしまったのか」
この怒りはあらゆる方向へ向けられ、環境などにも投射される。

第3段階  取り引き
「もっとお利口にしてたら、特別な報酬を得られるかもしれない」
周りの人たちなどに申し出て、何らかの約束をし、取り引きすること。

第4段階  抑鬱
「どうすることもできない」
大きなものを失くしたという喪失感の時期

第5段階  受容
「これは自分に起きたことなのだ」
痛みは去り、闘争は終わり、心がいくらかの平和と受容を見出す。
そして、希望へと進む。

著者は、本文中にこのプロセスを受け入れがたい人に対して無理をしないように進めている。
誰が望むわけでもなく、本人が心を軽くして、今を生きることを本当に望むなら、このプロセスは役に立つ。

悲しむこと・嘆くこと、悲哀のプロセスと言われるこのすべての段階を経て、静かな、本当に静かな境地に立つとき、心は、さびしくもあるが、決して孤立することのない人とのつながりを感じる。

(J)

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