ダブルバインド(double bind)理論で有名なベイトソンの30才~66才までの重要な論文と講演の大半が収められている。

“正統派”の諸学に対して、ベイトソンなりの思考で考察されている。
文化研究、学習理論、精神病理学、生物進化論、情報理論、一般意味論、動的記号論、無意識論、性格論、芸術論、環境論etc.
論理の甘さを検証しながら、独自のサイバネティック理論を展開している。

娘との対話で展開されている、“物はなぜゴチャマゼになるのか”の中で、ゴチャマゼとは、いったいどういうことかを展開していく。

F お前の思うゴチャマゼと他の人の思うゴチャマゼは同じかな?
D 同じでしょう?違うの?だってあたしが散らかしたの見るとあたしだけじゃなくてみんなゴチャゴチャだって思うわ。
F そうか。じゃあ、「片づいている」方はどうだろう。ほかの人が「片づいた」と思うのと、お前が「片づいた」と思うのと、同じだろうか。ママがお前のものを片づけたとき、何がどこにあるか、すぐにわかるかな?
D ・・・・ママならわかるかもね。ママの片づけ方ならわたし知ってるから。
F パパはママにも机を片付けさせたりしないぞ。パパの思う「片づいてる」とママの思う「片づいてる」は違うから。
D あたしとパパとでは?やっぱり違う?
F 違うね、きっと。
D でもパパ、変よ。ゴチャゴチャなのはみんな同じでしょう?なのに片づいているほうは、一人一人違うの?「片づいてる」って「ゴチャゴチャ」の反対なのに。おかしいわ        ~本文より抜粋~

ダブルバインド 二重拘束(double bind)
分裂病の発生因としてベイトソン(Bateson.G)らが1956年に発表した、家族内のコミュニケーションの病理。
親が子どもに相矛盾する二つのメッセージを異なる水準で同時に送り、受け手の子どもはその矛盾を指摘したりその場からの逃れることが許されない拘束状態に繰り返しさらされることを指す。
この概念は後に、分裂病以外の人間関係の伝達障害の研究にも応用されたり、ほかのタイプの病理的な家族にも見られるものとして拡大して用いられるようになった。     ~「カウンセリング辞典」より~

サイバネティックス cybernetic
組織化され自己制御されたすべてのシステムの通信と制御の科学。
サイバネティックの領域は、物理学者と数学者のみならず、神経心理学者と精神医学者にもその関心をひきつけている。
なぜなら支配したり方向付けられたりしうる電子頭脳の物理的メカニズム(レーダー、自動誘導装置付きロケット)と人間の思考との間にある種の類似性があるからだ。たとえ神経回路の存在(R・ロランド・ドノーの結合の相反法則)が証明されたとしても、人間の脳を神経構造の集まりに帰することは決してできそうにない。  ~「ラルース臨床心理学事典」より

ベイトソンはこの本の中で、環境汚染についてもふれている。
環境問題の根本原因が、a.テクノロジーの進展、b.人口増加、c.人間の本性及び人間と環境の関係のあり方に対する染み付いた考え違い、の三者の相互の絡まりにあると論じ、エコロジカルなバランスを獲得する必要があると言及している。

レーチェル・カーソンの「沈黙の春」(1962年出版)以来、環境問題を対処的に解決してきた結果、根本解決からより切り離れてしまっているとも言っている。われわれの思考法の変革が起こらない限り、われわれに未来はない。

(J)

「精神の生態学」 G.ベイトソン