辻村 深月 (つじむら みづき)

1980年山梨県生まれ。
2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。
『ロードムービー』『ふちなしのかがみ』『本日は大安なり』ほか多数。
繊細な心情をすくい上げる作品で注目を集めている。

地元の藤見高校を卒業して10年の月日が流れた。
時々開かれるクラス会での話題は、人気女優になったキョウコのことだ。
クラス会に一度も出席してないキョウコをどうにかして呼び出そうと、それぞれの思惑や思いを秘めて画策する。

出席番号 二十二番 半田 聡美
今は東京で事務の仕事をしている。
高校時代、演劇部の所属し、周りの人から『本当に綺麗ね』と言われている聡美だ。
夜には所属する劇団「常磐会」の稽古に出る。

自分とキョウコは、一体どこが違うのだろうか。

そんな聡美にキョウコへの連絡役が回ってくる。
キョウコに会ってクラス会に出席するように伝える役だ。
乗り気はしなかったが、里見沙江子と共に、パーティーでキョウコに会うことになる。
そして、キョウコに会うことで聡美に思いがけない変化をもたらすことにもなる。

出席番号 一番 里見 沙江子
小学校四年生の夏、校舎の玄関の待ち合わせの場所へ、貴恵は先に来ていた。
名を呼ぼうとした時、彼女が沙江子の靴箱から水色の封筒を出し、躊躇うことなしにその手紙をビリッと破いた。
破れた手紙。

半田聡美と連絡が入らなくなったと島田からメールが届く。
聡美とは、キョウコと会ったパーティー以来会っていない。
『半田さんと話して良かった。』
とキョウコからも聞いている。

貴恵は高校時代に真崎真と付き合っていた。
今は別の男と地元で結婚していて、子どももいる。

沙江子は自分が人気がないことは知っていた。
無理に周りと合わせず自分を曲げない。
クラスメートからは教師受けを狙っていると、陰口を叩かれた。
さりとて、周囲に合わせない自分を担任の教師すら持て余していることも、何となくわかっていった。

「孤立女子」とレッテルを貼られていた。
両親はいじめを心配したが、ただ嫌われているだけだ。
そんな沙江子に近寄って来たのが理恵だった。
それ以来、理恵とは仲のいい友達だ。

しかし、沙江子は理恵に勝ちたかった。
今、沙江子は真崎と付き合っている。
どこかで『勝った』と思っている。

出席番号二十七番 水上 由希
父と母が離婚し由希は祖母に育てられた。
祖母は幼稚園の友達が言うように「由希はね」と言った時でも、『みっともない。なんて甘ったれたような、恥ずかしい喋り方をするんだ』と張り倒された。
だから、祖母の言うように「私」と呼んだ。
誰一人そんな言い方をしなかったが、祖母の言葉は頭にこびりついて離れなかった。

祖母の作った洋服を着る由希は、時々祖母の作った洋服がヒットして、皆の関心や注目のもとになることがあった。

今はアパレルで働いている。
高校の同級生にはデザイナーと言っているが、実はそうではない。
クラス会にはいつも流行のデザインの服を着る。
冴えない沙江子とは違う。

女優となったキョウコのことは、『同じクラスの友人』と周りに言っている。
二人並んだ写真が欲しい。

そしてこの後、
出席番号 二番 島津 健太
出席番号 七番 高間 響子
と続く。

ミステリー作品ではないのに、ミステリーのように謎めいている。
元クラスメートの5人の現在のさまざまな思いが、物語を進めていく。
「キョウコ」とは誰の事か?
そして、つらい思いを超えて前に進むとはどういう事か?

読んでいると、登場人物が、あたかも自分であるような気分にさせる。

思春期の心の揺れや、誰の中にでもあるであろうコンプレックスや痛み、そして優越感。
それぞれの生き方と思いを交差させながら、読み応えのある巧みな文章で、感じ、考え、そして読み終わった。

(J)

「太陽の座る場所」