hon20150131加納 朋子 かのう ともこ

北九州市生まれ。
文教大学女子短期大学文芸科卒業。
「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。
95年「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞受賞。
『魔法飛行』『掌の中の小鳥』等がある。

ファンレターとラブレターは、勢いで出すに限るのだ。
―短大に通う十九歳の入江駒子は『ななつの子』という本を衝動買いし、読了後すぐに作者へファンレターを書くことを思い立つ。

本文 抜粋

駒子が心惹かれた『ななつのこ』は、幻想的なイラストも駒子にとっては魅力的なものだった。

作者に出したファンレターへの返事が返ってきて、予想もしなかった作者との手紙の交換が始まる。

本の主人公は 〝はやて”という名の少年だ。
勇ましくもなければ力強くもない。
運動神経が鈍いわけでもないのだが、とにかく要領が悪い。
皆から「泣き虫はやて」「弱虫はやて」という名を付けられている。

駒子は、小さい頃から内向的な子供だった。
ひとりで本を読むのが好きだ。
皆から「ぼっとしてる」といわれたり、時々素っ頓狂な事を言ったはまわりを驚かす。

「すいかお化け」は、はやての家のすいか畑からすいかが盗まれることから始まる。
父親から夜中すいかが盗まれないようにと見張りを仰せつかったはやてだが、一晩寝ないで見張ったのに、やはりすいかは盗まれた。
情けない思いのはやてに、犯人のなぞ解きをするのは、近所の「あやめさん」だった。

あやめさんの見事な謎解きのおかげで、はやてはもう、すいかを盗まれることはない。

一方、駒子は朝家の生ゴミを出すのに早朝の道路に出た。
そしてそこで目撃したのは、1メートル置きに点々と続く血の跡だった。
そのことが気になった駒子は、その血の痕跡の後を追う。
近所の人たちも気持ち悪がっていたりした。
何処かの誰かが『きっとスイカジュースの跡よ」というのを聞いて、疑問に思った彼女は、「ななつのこ」の作者である佐伯綾乃に再度手紙を出す。
その返信には、駒子の期待通りに見事な推理が書かれてあった。

全編7章の物語で綴られたこの本は、『入れ子』の手法が使われている。

『ななつのこ』の物語と駒子が遭遇する日常の何気ない事件とが、一見関係ないようでいて、それでいて、折り重なるように進行していく。

普段の生活の中で、ふと気になりながらも流していくようなことを、駒子は一つ一つ丁寧に解きほぐしていく。

そしてそれは、人への思いやりに充ちながらも偏見にも繋がるような思いなどに、一筋の解決の光を当てる。

常識という名の誤解は、時として人を苦しめ、また排除する。
そんな社会の片隅の小さな思いを、推理という手法で、癒しを与える。

(J)

「ななつのこ」