hon20150205有川 浩  Hiro Arikawa

高知県生まれ。
第10回電撃小説大賞『塩の街』で2004年デビュー。
2作目の『空の中』が読書界諸子より絶賛を浴び、『図書館戦争』シリーズで大ブレーク。
その後、『植物図鑑』『キケン』『県庁おもてなし課』『旅猫リポート』で、4年連続ブクログ大賞を受賞。
『フリーター、家を買う。』『三匹のおっさん』『海の底』などがある。

「その場合はむしろバベルよりソドムとゴモラがお似合いでね。‥‥‥
あ、言っとくけど怪獣とかの名前じゃないからね!」
「旧約聖書は知ってるかな?
その中に出てくる退廃と堕落の町だよ。
神は憂いて町を滅ぼすために御使いを遣わし、その御使いを住民の暴虐から庇ったロトという男だけ救われた。
御使いはロトに滅びを告げ、家族を連れて逃げるように命じた。」
入江は低い声で暗記しているらしいその文章を読み上げる。
命懸けで逃げよ。
低地にはどこにも立ちどまってはならない‥‥‥
ロトがゾアルの町を逃げ延びたとき、 太陽が昇った。
主は天より硫黄と火とをソドムとゴモラの上に降らせ、 これらの町と、 全ての低地と、 その町の全ての住人と、 その地に生えている物をことごとく滅ぼされた。
しかしロトの妻は後ろを顧みたので塩の柱となった。

本文 抜粋

その時、小笠原真奈は15歳の高校生だった。

世界中の人口密度の高い都市に、
空からおおきな塩の結晶の塊が落ちてきた。
そして、人が、塩の結晶の柱になってしまうという奇病が流行り出した。
塩害と名付けられたその現象は、日ごとに人々を襲い、東京も含めた、世界中の街に蔓延し、至る所に塩の柱が溢れだした。

その奇病に、さまざまな説が飛び出す。
ウイルスだとか電波だとか言われるが実態は掴めない。

塩害に始まった日、真美は高熱を出し家で寝ていた。
両親の帰りを待っていたが、何日たっても、二人とも家には帰ってこなかった。

テレビも最初は塩害の報道をしていたが、やがてそれも無くなり、わずかにNHKだけのほんのわずかな放送になっていった。
それも同じテープを繰り返していると言う噂もあった。

真美は両親を捜しに行こうかと迷うながらも家に居続けた。
冷蔵庫にストックされた食べ物も底をつき始めて、ようやく通っていた学校に行くが、配給所となってしまった学校は、真美には何の力にもならなかった。

政府は少しづつその機能しなくなる。
今や無政府と同じ状態だった。

配給は保険証で物はもらえたが、町には暴徒があふれ、危険に満ちていた。
スーパーやコンビニもガラスが割れて物は無くなっていた。

真美はただひたすら家で両親を待った。

そんなとき、真美の家にも暴徒が来る。
両親が居なくて真美ひとりと知った暴徒たちがマンションの部屋を襲う。
近所の人たちは暴徒を恐れ、真美を助けようとはしなかった。

恐さに震えながらも、真美はかつて母が防災のために用意していた縄梯子で辛うじて家を脱出する。
が、町には同じように暴徒たちが横行し、襲われている真美に救いの手を差し伸べたのは、秋葉という名の男性だった。

行くところのない真美を、秋葉は自分のマンションに住まわせて、二人の共同生活が始まる。

空軍自衛隊に所属していた秋葉と、今は自衛隊駐屯司令官の肩書を持つ、秋葉の高校の同級生の入江。
冷静で目的のためには手段を択ばない入江と、自分の主義を曲げない秋葉。
この二人が、この塩害から元の状態に戻すために、動き始める。

ライトノベルだが、軽快で、発想が面白い。
読ませる文章で楽しめる作品になっている。

秋葉と真美の恋愛を絡めて、この奇妙な塩害という現象の究明とその塩害から、世界を救う秋葉たちをスマートに描く。

ライトノベルは安心して読める。
主人公は絶対に勝利する。

不安に溢れる街で、その不安から逃げ出さずに、自分の力で立ち向かう二人の生き様は、まさに、カッコよさを感じる。
〝出来過ぎかな?”とも思うが、まあいいか~。

(J)

塩の街  WISH ON MY PRECIOUS