沢木 耕太郎 (さわき・こうたろう)hon20160226_4

1947年、東京都生まれ。
70年に横浜国立大学経済学部卒業。
若きテロリストと老政治家の、
その一瞬までのシーンを積み重ねることで、
浅沼稲次郎刺殺事件を描ききった『テロルの決算』で
79年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
『一瞬の夏』(81年、新田次郎文学賞)、
『深夜特急』(86年、92年)、
『壇』(95年)、『凍』(2005年、講談社ノンフィクション賞)、
『キャパの十字架』(13年、司馬遼太郎賞)など
常に方法論を模索しつつ
ノンフィクションに新しい地平を開いてきた。
2003年、
菊池寛賞を受賞。
訳書に『キャパ』全三冊(R.ウィーラン著、1988年)などがある。

報道写真「崩れ落ちる兵士」はスペイン内戦時に取られた。
やがてスペイン共和国が崩壊する予告でもあるように、キャパとキャパのパートナーであったゲルダの二人が、内戦のスペインで撮られたとされる有名な写真だ。

この写真は謎が多いとされる。
キャパの足跡を追う筆者が、その謎を解くために、様々な仮説を立て、それを実証するために世界を廻る。

タイトルである『キャパの十字架』、なぜ十字架なのか。
キャパは何を背負ったのか、それを筆者は追いかける。

キャパが亡くなっている今、謎は謎のままに残り、答えはでないが、その仮説は興味深く、果てしない夢のような世界へと読者を誘う。

キャパの「崩れ落ちる兵士」は世界中で様々な意見が出されている。
様々な本も出版されており、沢木さんは、その筆者に会い意見を聞き、それをさらに自分で確かめる。

どこで撮られた写真なのか?
本当に戦場で銃弾に撃たれたものなのか?
そして本当は誰が撮った写真なのか?

追えば追うほど疑惑は出てくる。

その疑惑を一つ一つ自分なりの検証の仕方で突きつけていく。
感心するほどの熱意と推察力だ。

写真の中の影・位置関係、風景や太陽の位置、写真家の技術も含めて考える。
人々に様々な意見を聞きながら、やがて一つの結論へと至る。
「崩れ落ちる兵士」は、キャパではなくゲルダが撮った写真ではないかと…。

推理小説を読むような迫力は、実際に戦場に生きて、そして戦場に死んでいった熱愛するロバート・キャパへの筆者の思いと重なる。

キャパは、写真家として戦場を撮影し、そして戦争で死んでいった人々を見て写真に収めた。
彼は戦場で仕事である写真を撮ったが、その心情がどんなものであったかを筆者は語る。
どんなに苦しく、どんなに悔恨したかと。

壮絶な人生だったろうと想像する。

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「崩れ落ちる兵士」の写真

 

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「うずくまる中国人女性」

中国人の女性が日本軍の空襲によって破壊された家の前でうずくまり、
顔を覆っている。

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「波の中の兵士」

「ノルマンディ上陸作戦」を撮るために派遣されたキャパの写真

 

(J)

「キャパの十字架」